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平成28年新年ご挨拶

2016・01・07

当協会、代表理事会長 栗原一家より新年のご挨拶をさせていただきます。

「宮沢賢治と地球温暖化」

COP21で世界各国の「温暖化対策」目標が決まりましたが、先進国と発展途上国の意識の違いもあり、何とか計画の通りに進むことを祈るばかりです。

今年も一人一人が環境を意識して出きることを実行する年にしたいと思います。

「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」の著者 宮沢賢治の絵童話集の中に「グスコーブドリの伝記」という童話があります。これは賢治のイーハトーブワールドの中のお話しですが、東北の厳しい風土(気候)の中で、農業・農村の向上に苦心惨憺した賢治の祈りでもあるように思います。このお話しの中に、『気層の中に炭酸ガスが増えてくれば、暖かくなる!』という文章が出てきます。賢治は明治29年の生まれですから、この時代から「地球温暖化」を予測していた、とも言えるのです。 その一部を紹介しますと(そしてちょうどブドリが27の年でした。どうもあの恐ろしい寒い気候がまた来るような模様でした。測候所では太陽の調子や北の方の海の氷の様子から、その年の二月にみんなへそれを予報しました。それが一足づつだんだん本当になって、こぶしの花が咲かなかったり、五月に十日もみぞれが降ったりしますと、みんなはもう、この前の凶作を思い出して生きたそらもありませんでした。 中略 ところが六月もはじめになって、まだ黄いろなオリザの苗や、芽を出さない樹を見ますと、ブドリはもう居ても立ってもいられませんでした。このままで過ぎるなら、森にも野原にも、ちょうどあの年のブドリの家族のようになる人がたくさんできるのです。ブドリはまるで物も食べずに幾晩も幾晩も考えました。 ある晩ブドリはクーボー博士のうちを訪ねました。「先生、気層の中に炭酸ガスが増えて来れば暖かくなるのですか?」「それはなるだろう。地球が出来てから今までの気温は、大抵空気中の炭酸ガスの量で決まっていたと言われるくらいだからね」

この話は現代の地球温暖化とは真逆のとらえかたですが、気候の変動と人間の生活をとても身近に表した賢治の生活からにじみ出た文章だと思います。

「誰が地球をこんな環境にしたのか?」を論じることよりも、現在の状況をどのようにすれば、皆のためになるか。 童話の中でブドリは火山を爆発させて、炭酸ガスを放出させ、温暖化をさせることで人々を救い、自らはそのために尊い命を落とすという童話ですが、今私達に教えることはとても大きいと思います。

(㈱くもん出版:宮沢賢治絵童話集⑩ グスコーブドリの伝記より引用)

 

                      代表理事 会長 栗原 一家